マメ科イヌエンジュ属
漢字:犬槐
名前の由来:
「イヌ(犬)」は、中国原産のエンジュ(槐)からは、漢方薬の止血剤の槐花(かいか)が作られるが、日本産のイヌエンジュでは用いられなかった。
「エンジュ(槐)」は、古名「エニス(恵爾須)」の転化で、 エニスは、エンジュの種子を意味する「エス(槐子)」に由来。
樹形:落葉高木
葉:互生、奇数羽状複葉
花:両性花、総状花序、蝶形花、淡黄白色
花期:7~8月
果実:豆果
果期:10~11月
備考:
枝を折るとソラマメに似た匂いがする。
材はエンジュより優れる。堅く強靭で、狂いが少なく粘りがある。床柱、家具、器具材、三味線や鼓(つづみ)の胴に用いる。
カテゴリー: 木本
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イヌエンジュ Maackia amurensis
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イチョウ Ginkgo biloba
イチョウ科イチョウ属
漢字:銀杏
漢名:公孫樹
名前の由来:
葉の形が水かきを持つ鴨の脚に似ており、宋時代の中国名「鴨脚」を「ヤーチャオ」と聞き転訛した説あり。
漢字「銀杏」は、種子が銀(白)色で、外種皮が杏(あんず)に似ている。
漢名「公孫樹」は、中国での当て字、孫の代にならないと結実しないことから。
樹形:落葉高木
葉:互生(長枝)、輪生(短枝)
花:雌雄異株、無花被花(萼と花冠なし)、短枝に束生
花期:4~5月
種子:銀杏(胚珠が成長したもので種子であり果実ではない)
種期:10~11月
備考:
中国原産。
起源は古生代にさかのぼり、「生きている化石」といわれる。
葉脈は途中で二股に分かれて広がる「ニ叉状脈(にさじょうみゃく)」。
種子は臭気の強い外種皮につつまれ、取り除くと堅い殻(内種皮)の銀杏があり胚乳は食用。素手で触るのは注意が必要。ウルシ科の植物にかぶれる場合、かぶれる可能性あり。
内種皮を取り除いた種子は生薬の「白果仁(はくかにん)」と呼ばれ、咳止めや痰切りに用いた。
一度に大量のギンナンを食べると、ビタミンB6欠乏症で、嘔吐、下痢、呼吸困難を起こす場合あり。
燃えにくく火災に強いが、過湿な土に弱い。
コケ植物やシダ植物と同様に精子で受精する。
材は白く美しく、ソロバン玉、木魚、碁盤、漆器の木地、まな板に用いる。
<雌雄の違い>
落葉した時の短枝の芽で比べる方法
雄木は膨らんでいる。雌木は小さく尖っている。 -
イチイ Taxus cuspidata
イチイ科イチイ属
漢字:一位
名前の由来:仁徳天皇が、本種に笏(しゃく)をつくる高貴な木として最高位の「正一位(しょういちい)」を授けた説あり。
樹形:常緑高木
花:雌雄異株、雄花は淡黄色、雌花は淡緑色
花期:3~5月
種子:核果状、備考の記事参照
種期:9~10月
備考:
葉や木部、種子は有毒。
肥大して杯状になった仮種皮が種子を包む。仮種皮は肉質で紅朱色になると甘味があって食べることができる。中の種子の外種皮は有毒なので、食べないように、嚙みつぶさないにする。鳥やサルが種を丸ごと食べて平気なのは、外種皮は丈夫で動物は消化できず、糞でそのまま出るため。葉や木部、種子にタキシンやタキソールなどの毒がある。
材は年輪幅が狭く、弾力性と光沢があることから建築材、家具材、彫刻材に用いた。昔は、強靭で粘りがあり折れにくいため、弓材に用いた。
<カヤとの違い>
カヤに比べて葉の先端がやわらかく、触れても痛くない。葉の裏の白色気孔帯が薄い緑で目立たない。
<キャラボクとの違い>
イチイの側枝はほぼ二列に葉が並ぶ。キャラボクは葉がらせん状に並ぶ。 -
イタヤカエデ Acer mono
ムクロジ科カエデ属
漢字:板屋楓
名前の由来:
「イタヤ(板屋)」は、大きな葉が水平によく茂り、雨が降っても雨宿りできる板で葺いた屋根「板屋」にたとえた。
「カエデ(楓)」は、イロハカエデの名前の由来参照。
樹形:落葉高木
葉:対生
花:雌雄同株(雄花と両性花が混じる)、散房花序、淡黄緑色
花期:4~5月
果実:翼果、狭い角度で開く
果期:9~10月
備考:
葉裏の脈液に淡黄褐色の毛叢あり。
多くのカエデ類が葉縁に鋸歯があるのに対し、イタヤカエデ類は鋸歯なし。
木肌が白く弾力があり、加工も容易なため、かつては家具や楽器、スキー板などに利用された、細いものはテープ状に剥いで籠編みに用いた。
日本産の樹木としては糖分が多く、東北から北海道にかけて、春先に「メープルサップ」と呼ばれる甘い樹液を採取した。
<樹液が甘い理由>
寒い時期の広葉樹は、養分を貯蔵している柔細胞内の濃度を濃くして、凍らないようにしている。春、根が休眠状態から目覚めて水分吸収を始めると、根にある柔細胞内の濃い細胞液を薄めるために、水分が細胞内に吸い込まれる。順次上にある柔細胞が水分を吸収し、幹の道管に水が上がっていく。この時、道管液には、柔細胞から排出された糖分が溶け込んでいる。幹に穴をあけると道管液がにじみ出る。 -
イイギリ Idesia polycarpa
ヤナギ科イイギリ属
漢字:飯桐
漢名:椅桐
別名:ナンテンギリ(南天桐)
名前の由来:
「イイ(飯)」は、昔、飯をこの葉で包んだ。
「ギリ(桐)」は、材が白くて軽く、箱材や下駄材などキリ材の代用とした。
ナンテンギリの「ナンテン(南天)」は、艶のある赤い果実をナンテンの赤い果実にたとえた。「南天箸」の多くは、ナンテンの代用品としてイイギリを使っている。
樹形:落葉高木
葉:互生
花:雌雄異株、円錐花序、単花被花(花冠なし萼のみ)、黄色
花期:4~6月
果実:液果、赤色
果期:10~11月
備考:
幼木の成長が早い。
枝は、ミズキなどと同様に、同じ場所から横方向に放射状に伸ばし、車輪状に枝を広げた樹形になる。
新枝の葉は基部のものほど大きく、葉柄は葉身より長くなり、先端に行くにしたがって葉は小さくなり、葉柄も短くなり、それぞれの葉が重ならないようになっている。
葉身の基部に1対の褐色の蜜腺、葉柄の基部近くに1~3個の蜜腺がある。
葉縁は低鋸歯だが、先端が小さく突起して腺になっている。 -
アラカシ Quercus glauca
ブナ科コナラ属
漢字:粗樫
名前の由来:
「アラ(粗)」は、枝葉が粗く、葉の鋸歯が粗い。
「カシ(樫)」は、カタギ(堅い木)。
樹形:常緑高木
葉:互生
花:雌雄同株
花期:4~5月
果実:堅果
果期:秋
備考:
葉や樹皮には多量のタンニンを含むため、媒染剤やなめし皮剤に用いる。
小径木が多いことから、薪炭材やパルプ用材にしか用いられない。
カシ類の冬芽は多数の鱗片が重なりあった砲弾形。枝先に複数の同じような大きさの芽がつく「頂生側芽」。上から見ると5稜があり5角鐘形で、コナラ属共通の形態。 -
アブラチャン Lindera praecox
クスノキ科クロモジ属
漢字:油瀝青
名前の由来:
アブラ「油」+チャン「瀝青(れきせい:タールやピッチ等黒色の粘着性のあるものの総称)」
果実や樹皮に油分が多い。
樹形:落葉低木
葉:互生
花:雌雄異株、散形花序、雄花 淡黄色 雌花 緑黄色
花期:3~4月
果実:液果、黄褐色、種子は赤褐色
果期:9~10月
備考:
種子に油が多い。絞って灯明油(とうみょうあぶら)(神仏に供えるともしびの油)や頭髪油に用いた。枝にも油が多く、生木(なまき)でもよく燃える。
枝葉に、クロモジ、ダンコウバイ、ヤマコウバシに似た芳香あり。
株立ちになることが多い。
葉柄は赤みを帯びて目立つ。
細長い幹は材のしなりとねじれ強さから、杖や輪かんじき、昔は縄代わりに用いた。
<ダンコウバイ、クロモジ、ヤマコウバシとの違い>開花時期 花序 葉 冬芽 アブラチャン 葉の展開前 短い柄あり ヤマコウバシより厚く、先端が尖り、葉柄が長く赤い 混芽ではない ダンコウバイ 同上 無柄 ‐ 同上 クロモジ 葉の展開と同時 ‐ ‐ 同上 ヤマコウバシ 同上 – アブラチャンより薄く、先端は鈍頭、葉柄は短く赤くない、葉裏がやや粉白色 花と葉の両方が入る混芽 -
アセビ Pieris japonica
ツツジ科アセビ属
漢字:馬酔木
名前の由来:
万葉集で「あしび」の名で読まれており、有毒の実を指す「悪し実(あしみ)」を意味する説が有力。
酔った馬が足を曳(ひ)く「脚曳き」説、
足が痺(しび)れるので「足痺れ」から転訛した説など諸説あり。
漢字「馬酔木」は当て字とされ、馬が食べると酩酊状態になる様子を表現。
樹形:常緑低木
葉:互生、枝先に集まる
花:両性花、下垂、複総状花序、白色
花期:3~4月
果実:蒴果、褐色、先端に花柱が残る
果期:9~10月
備考:
葉や花に有毒成分が含まれ、中毒すると嘔吐、腹痛、下痢、四股麻痺などを起こす。奈良公園にアセビが多いのは、鹿が食べないため。葉の煎液は、殺虫剤に用いた。
ツツジ科の植物は、葉や花に有毒物質を含むものが多い。
鳥媒花:開花時期は、まだ昆虫が少ないため、メジロなどが花粉を媒介する。