ムクロジ科カエデ属
漢字:板屋楓
名前の由来:
「イタヤ(板屋)」は、大きな葉が水平によく茂り、雨が降っても雨宿りできる板で葺いた屋根「板屋」にたとえた。
「カエデ(楓)」は、イロハカエデの名前の由来参照。
樹形:落葉高木
葉:対生
花:雌雄同株(雄花と両性花が混じる)、散房花序、淡黄緑色
花期:4~5月
果実:翼果、狭い角度で開く
果期:9~10月
備考:
葉裏の脈液に淡黄褐色の毛叢あり。
多くのカエデ類が葉縁に鋸歯があるのに対し、イタヤカエデ類は鋸歯なし。
木肌が白く弾力があり、加工も容易なため、かつては家具や楽器、スキー板などに利用された、細いものはテープ状に剥いで籠編みに用いた。
日本産の樹木としては糖分が多く、東北から北海道にかけて、春先に「メープルサップ」と呼ばれる甘い樹液を採取した。
<樹液が甘い理由>
寒い時期の広葉樹は、養分を貯蔵している柔細胞内の濃度を濃くして、凍らないようにしている。春、根が休眠状態から目覚めて水分吸収を始めると、根にある柔細胞内の濃い細胞液を薄めるために、水分が細胞内に吸い込まれる。順次上にある柔細胞が水分を吸収し、幹の道管に水が上がっていく。この時、道管液には、柔細胞から排出された糖分が溶け込んでいる。幹に穴をあけると道管液がにじみ出る。
カテゴリー: 木本
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イタヤカエデ Acer mono
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イイギリ Idesia polycarpa
ヤナギ科イイギリ属
漢字:飯桐
漢名:椅桐
別名:ナンテンギリ(南天桐)
名前の由来:
「イイ(飯)」は、昔、飯をこの葉で包んだ。
「ギリ(桐)」は、材が白くて軽く、箱材や下駄材などキリ材の代用とした。
ナンテンギリの「ナンテン(南天)」は、艶のある赤い果実をナンテンの赤い果実にたとえた。「南天箸」の多くは、ナンテンの代用品としてイイギリを使っている。
樹形:落葉高木
葉:互生
花:雌雄異株、円錐花序、単花被花(花冠なし萼のみ)、黄色
花期:4~6月
果実:液果、赤色
果期:10~11月
備考:
幼木の成長が早い。
枝は、ミズキなどと同様に、同じ場所から横方向に放射状に伸ばし、車輪状に枝を広げた樹形になる。
新枝の葉は基部のものほど大きく、葉柄は葉身より長くなり、先端に行くにしたがって葉は小さくなり、葉柄も短くなり、それぞれの葉が重ならないようになっている。
葉身の基部に1対の褐色の蜜腺、葉柄の基部近くに1~3個の蜜腺がある。
葉縁は低鋸歯だが、先端が小さく突起して腺になっている。 -
アラカシ Quercus glauca
ブナ科コナラ属
漢字:粗樫
名前の由来:
「アラ(粗)」は、枝葉が粗く、葉の鋸歯が粗い。
「カシ(樫)」は、カタギ(堅い木)。
樹形:常緑高木
葉:互生
花:雌雄同株
花期:4~5月
果実:堅果
果期:秋
備考:
葉や樹皮には多量のタンニンを含むため、媒染剤やなめし皮剤に用いる。
小径木が多いことから、薪炭材やパルプ用材にしか用いられない。
カシ類の冬芽は多数の鱗片が重なりあった砲弾形。枝先に複数の同じような大きさの芽がつく「頂生側芽」。上から見ると5稜があり5角鐘形で、コナラ属共通の形態。 -
アブラチャン Lindera praecox
クスノキ科クロモジ属
漢字:油瀝青
名前の由来:
アブラ「油」+チャン「瀝青(れきせい:タールやピッチ等黒色の粘着性のあるものの総称)」
果実や樹皮に油分が多い。
樹形:落葉低木
葉:互生
花:雌雄異株、散形花序、雄花 淡黄色 雌花 緑黄色
花期:3~4月
果実:液果、黄褐色、種子は赤褐色
果期:9~10月
備考:
種子に油が多い。絞って灯明油(とうみょうあぶら)(神仏に供えるともしびの油)や頭髪油に用いた。枝にも油が多く、生木(なまき)でもよく燃える。
枝葉に、クロモジ、ダンコウバイ、ヤマコウバシに似た芳香あり。
株立ちになることが多い。
葉柄は赤みを帯びて目立つ。
細長い幹は材のしなりとねじれ強さから、杖や輪かんじき、昔は縄代わりに用いた。
<ダンコウバイ、クロモジ、ヤマコウバシとの違い>開花時期 花序 葉 冬芽 アブラチャン 葉の展開前 短い柄あり ヤマコウバシより厚く、先端が尖り、葉柄が長く赤い 混芽ではない ダンコウバイ 同上 無柄 ‐ 同上 クロモジ 葉の展開と同時 ‐ ‐ 同上 ヤマコウバシ 同上 – アブラチャンより薄く、先端は鈍頭、葉柄は短く赤くない、葉裏がやや粉白色 花と葉の両方が入る混芽 -
アセビ Pieris japonica
ツツジ科アセビ属
漢字:馬酔木
名前の由来:
万葉集で「あしび」の名で読まれており、有毒の実を指す「悪し実(あしみ)」を意味する説が有力。
酔った馬が足を曳(ひ)く「脚曳き」説、
足が痺(しび)れるので「足痺れ」から転訛した説など諸説あり。
漢字「馬酔木」は当て字とされ、馬が食べると酩酊状態になる様子を表現。
樹形:常緑低木
葉:互生、枝先に集まる
花:両性花、下垂、複総状花序、白色
花期:3~4月
果実:蒴果、褐色、先端に花柱が残る
果期:9~10月
備考:
葉や花に有毒成分が含まれ、中毒すると嘔吐、腹痛、下痢、四股麻痺などを起こす。奈良公園にアセビが多いのは、鹿が食べないため。葉の煎液は、殺虫剤に用いた。
ツツジ科の植物は、葉や花に有毒物質を含むものが多い。
鳥媒花:開花時期は、まだ昆虫が少ないため、メジロなどが花粉を媒介する。 -
アズマシャクナゲ Rhododendron degronianum
ツツジ科ツツジ属
漢字:東石楠花
名前の由来:
「アズマ」は、東日本に多い。
「シャクナゲ」は、漢名「石南花」を呉音(ごおん)読みした「しゃくなんげ」が転訛したものだが、「石南花」は、本来バラ科のオオカナメモチで誤用。
樹形:常緑低木
葉:互生
花:両性花、淡紅紫~紅紫色
花期:5~6月
果実:蒴果
果期:7~10月 -
アスナロ Thujopsis dolabrata
ヒノキ科アスナロ属
漢字:翌檜/明日檜
別名:ヒバ(檜葉)は、アスナロの変種ヒノキアスナロ(var. hondai)をいうことが多い。
名前の由来:「明日はヒノキになろう」からとする俗説があるが、それほどヒノキより劣っているわけではない。
樹形:常緑高木
葉:十字対生(小さな鱗のように見えるのが1個の葉)
花:雌雄同株
花期:5月頃
種子:球果
種期:10~11月
備考:
日本固有種。
材の強度はヒノキに少し劣るが、スギよりは強い。材に含まれるヒノキチオールという精油は、強い抗菌性と防虫性をもち、ヒノキよりもはるかに耐久性があり、シロアリなどの害に強い。
材は建築、家具などに用いるほか、漆器の木地にも用いられる。
耐陰性が極めて強いため、日陰の庭木に用いたり、山林の境界木(キョウカイキ)に植えられる。 -
アズキナシ Sorbus alnifolia
バラ科ナナカマド属
漢字:小豆梨
別名:ハカリノメ(秤の目)
名前の由来:
果実がナシに似ていて、アズキのように小さい。
「ハカリノメ(秤の目)」は、紫黒色の若枝の白色の皮目を秤の目盛りに見立てた。
樹形:落葉高木
葉:互生、短枝化した側枝に3枚着くことが多い
花:両性花、複散房花序、白色
花期:5~6月
果実:ナシ状果、赤色、表面に白い皮目あり、先端はやや凹む
果期:10~11月
備考:材は堅く重く、薪炭材に用いたり、器具類や家具、櫛にも用いられる。